傷害扱いとされた死亡事故・交通事故被害者遺族の絶望

ここでは、当事務所の代表的な事例のうち、自賠責保険に対して、死亡原因と交通事故との因果関係を認めさせることができた事例を紹介します。

私は当時、交通事故の保険は、十分な賠償金を払ってくれるのが当たり前だと思っていました。

普段、高い保険料を支払っているのですから。

しかし、あるお年寄りが交通事故で亡くなった案件が、当事務所に持ち込まれたことにより、これらの考えが、間違いであることを思い知らされました。

その被害者さんは、高齢とはいえ、事故当時、自転車で外出にするほど元気でした。

その外出の際に、自動車との接触事故に遭い、それから5ヶ月でその方は亡くなりました。

驚くべきは保険会社の損害賠償の考え方です。

その方が、事故当時、癌であったという理由で、死亡原因は癌のためであると決め、骨折の治療部分のみの賠償となっていました。

死亡は、癌の為であるから、交通事故の賠償金は、外傷に対するもののみとし、骨折の治療などの入通院部分のみの、わずかな賠償金額の提示だったのです。

事故がなくても、その方は、5ヶ月後に癌のため、亡くなる予定だったとでもいうのでしょうか。

内科の先生には、5年は癌の為に亡くなることはない、と言われていたのに。高齢のため、進行が遅かったのです。

行政書士仲間には、裁判にしないと、どうにもならないのではないか、と言われました。

なので、弁護士に頼ることも考えました。

しかし、ある弁護士に相談したところ、この案件では、医療鑑定が必要で、そのために高額な費用がかかり、その費用を支払ったとしても、裁判で勝てるかどうかは別問題、と言われました。

そうでなくても、その方の医療費、葬儀費等で出費がかさみ、遺族は、借金さえしていたで、そんな博打みたいなことはできません。

遺族も、あちらこちらに相談に行っていたようですが、最後には、誰か、弁護士さんの知り合いはいないんですか? と相談担当者に言われる始末だったようです。

当事務所にいらした際に、自賠責への異議申し立てや、紛争処理機構利用なら、お金がかからないことを説明し、次の方法を提案しました。

まず、自賠責に対して、異議申立てを行い、それでもダメなら、紛争処理機構に頼ろう、というものです。

私は、レセプトや、医師の診断書等の写しを入手し、その方が癌のために通っていた病院をまわりました。

そして、毎晩、医学書に目を通し、異議申立書を作成したのです。

こう書くと、異議申立書は簡単にできたように思われるでしょうが、そんなことはありません。

病院は、その方が癌であることを発見した病院はとても親切でしたが、その後、癌の治療の為に通っていた大病院は、なんの対応もしてくれず、事実確認と資料作成は困難を極めました。

そうした悪戦苦闘の末、異議申立書を作り、自賠責に提出しました。

結果は。

死亡原因は、特定することが難しいので、今回は、その原因割合を、交通事故50%、癌50%とする、という回答を得ました。

賠償金も、怪我ばかりではなく死亡に対しても半分ではありますが、支払われることになりました。

大躍進です。

しかし、納得いかないこともありました。

任意保険会社提示の賠償金の金額が、自賠責保険の範囲に近い計算だったことです。

治療費も、外傷治療部分しか払ってもらえず、寝たきりになってからの治療費は払ってもらえませんでした。

東京三弁護士会基準によれば、もっと高額な賠償金を手にすることができるはずでした。

もっとも、ご高齢でしたので、こういった賠償で大きな金額を占める逸失利益は、べらぼうに大きくなるものでもありませんでしたが。

任意保険会社提示の賠償案について、任意保険会社に尋ねますと、そっちが賠償金を上げる為に争うのなら、こちらも、余命が5年で計算されているが、本当に5年生きられたかどうかについて争い、その部分で賠償金の減額を図る、と言ってきたのです。

なんのための任意保険なのか、愕然としました。

自賠責では払い切れない賠償金を当然に払ってくれるのが任意保険だと思っていたのに。

結局、遺族一同が、最初の怪我に対してのみの賠償金提示まで時間がかかり、異議申立てにも時間がかかり、これ以上、時間をかけて争うには、もう、疲れすぎた、借金も返さなければならない、今回の賠償金でも十分だ、ということで、結局、自賠責の範囲に近い額での賠償金を受け取ることにしました。

ここまでには、多くの行政書士仲間の助けがありました。

また、このケースで、よく、交通事故の死亡原因を50%にまで持っていけたものだと、交通事故の案件を数多く経験された先生にも感心されました。

このケースで、医学的な知識で自賠責の判断を覆すことができた部分については、良い結果といえますが、任意保険会社との交渉は、甘い部分もあったような気もします。

もっとも、交渉そのものは、行政書士がすべき部分ではないので、遺族がこれでよい、という以上、無理にどうこうすることはできないのですが。

遺族の方にも、「先生も、やれるところまでやりたい、という思いはあるでしょうが、私たちはこれで満足ですから」と言われたこともあり、このような解決になりました。

無駄に賠償金を払い渋るのが保険会社の役割でもなければ、無駄に被害者をあおり、解決をむずかしいものにするのも、私の役目ではありません。

実は、これが、私の関わった、初の交通事故案件です。

私は、この経験を生かし、多くの交通事故被害者の方の力になりたい、と考え、今日に至っています。

この案件の経験から、法律書よりも、医学書の方が、興味を持って読めるようになってしまいました。

自賠責への認定手続きには、後遺障害認定のみならず、後遺障害や、死亡と、交通事故との因果関係を判断させるものもある、ということを知っていただきたく、この事例を掲載しています。

伝え聞いた話ですが、交通事故で脚を失ったにもかかわらず、それは持病の糖尿病が原因である、なんて判断をされることもあるようです。


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