計測した関節可動域に基づき行なわれる、関節の機能障害の判断は、以下の基準によって行われます。
1、関節の強直
関節の強直とは、関節の完全強直又はこれに近い状態にあるものをいいます。
「これに近い状態」とは、関節可動域が、原則として健側の関節可動域角度の10%程度以下に制限されているものをいいます。
「10%程度」とは、健側の関節可動域角度(せき柱にあっては、参考可動域角度)の10%を5度単位で切り上げた角度のことをいいますので、10%ピッタリよりは、大きな角度になります。
例えば、ひざ関節(屈曲)に大きな可動域制限があり、健側の可動域が130度である場合は、可動域制限のある関節の可動域が、130度の10%を5度単位で切り上げた15度となり、 患側の可動域がこの範囲内であれば、ひざ関節の強直となります。
そして、関節可動域が10度以下に制限されている場合はすべて「これに近い状態」に該当するものと取り扱われます。
2、主要運動が複数ある関節の機能障害
1)関節の用廃
上肢・下肢の3大関節のうち主要運動が複数ある肩関節及び股関節については、いずれの主要運動も全く可動しない又はこれに近い状態となった場合に、関節の用を廃したものと認定さ れます。
2)関節の著しい機能障害及び機能障害
上肢・下肢の3大関節のうち主要運動が複数ある肩関節及び股関節については、主要運動のいずれか一方の可動域が健側の関節可動域角度の1/2以下又は3/4以下に制限されているときは、関節の著しい機能障害又は機能障害と認定されます。
また、せき柱(頸椎)にあっては、屈曲・伸展又は回旋のいずれか一方の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されているときは、せき柱に運動障害を残すものと認定されます。
3、参考運動を評価の対象とする場合
上肢及び下肢の3大関節については、
・主要運動の可動域が1/2(これ以下は著しい機能障害)又は3/4(これ以下は機能障害)をわずかに(原則として5度)上回る場合に
・さらに当該関節の参考運動が1/2以下又は3/4以下に制限されているときに、 関節の著しい機能障害又は機能障害と認定されます。
つまり、主要運動の可動域が微妙な場合に、参考運動を見て判断するということです。
また、せき柱については、頸椎又は胸腰椎の主要運動の可動域制限が参考可動域角度の1/2をわずかに(原則として5度)上回る場合に、頸椎又は胸腰椎の参考運動が1/2以下に制限されているときは、頸椎又は胸腰椎の運動障害と認定されます。
「わずかに」の、原則5度の例外としては次のものがあり、その場合は10度とされます。
ア せき柱(頸部)の屈曲+伸展・回旋
イ 肩関節の屈曲・外転
ウ 手関節の屈曲+伸展
エ 股関節の屈曲+伸展
例えば、肩関節の健側の可動域角度が180度の場合は、180度の1/2の90度に10度を加えた100度を基準として判断します。
参考運動が複数ある関節にあっては、 複数のうちの1つの参考運動の可動域角度が上記のとおり制限されていれば認定されます。