眼の後遺障害・判断の注意点

1、視力障害

ア、視力の測定は、原則として、万国式試視力表によりますが、実際上これと同程度と認められる文字、図形等の視標を用いた試視力表又は視力測定法を用いてもよいこととされています。

イ、障害等級表にいう視力とは、矯正視力をいいます。 ただし、矯正が不能な場合は裸眼視力によります。

(矯正視力には、眼鏡による矯正、医学的に装用可能なコンタクトレンズによる矯正又は眼内レンズによる矯正によって得られた視力が含まれます)

ウ、矯正視力による障害等級の認定は、次によることとされています。

a 角膜の不正乱視が認められず、かつ、眼鏡による完全矯正を行っても不等像視を生じない者については、眼鏡により矯正した視力を測定して障害等級を認定します。

・不等像視とは、左右両眼の屈折状態等が異なるため、左眼と右眼の網膜に映ずる像の大きさ、形が異なるものをいいます。

b 上記a以外の者については、コンタクトレンズの装用が医学的に可能であり、かつ、コンタクトレンズによる矯正を行うことにより良好な視界が得られる場合には、コンタクトレンズにより矯正した視力を測定して障害等級を認定します。

c 不等像視を生ずる場合であって、コンタクトレンズの装用が不能な場合には、眼鏡による完全矯正を行い、眼鏡矯正の程度を調整して不等像視の出現を回避し得る視力により障害等級を認定します。

d コンタクトレンズの装用の可否及び視力の測定は、コンタクトレンズを医師の管理下で3か月間試行的に装用し、その後に行います。

なお、コンタクトレンズの装用が可能と認められるのは、1日に8時間以上の連続装用が可能な場合とされています。

エ、「失明」とは、眼球を亡失(摘出)したもの、明暗を弁じ得ないもの及びようやく明暗を弁ずることができる程度のものをいい、光覚弁(明暗弁)又は手動弁が含まれます。

(「光覚弁」とは、暗室にて被検者の眼前で照明を点滅させ、 明暗が弁別できる視力をいいます。「手動弁」とは、検者の手掌を被検者の眼前で上下左右に動かし、動きの方向を弁別できる能力をいいます。「指数弁」は、検者の指の数を答えさせ、それを正答できる最長距離により視力を表すもので、「1m/指数弁」、「50cm/ 指数弁」「30cm/指数弁」等と表記します。 このうち、「1m/指数弁」は視力0.02に、「50cm/指数弁」 は視力0.01にそれぞれ相当するものとされています。それより短い距離については換算は困難とされ、明らかにされていません。

オ、両眼の視力障害については、障害等級表に掲げられている両眼の視力障害の該当する等級をもって認定することとされています。

1眼ごとの等級を定め、併合の方法を用いて準用等級を定める取扱いは行いません。

ただし、両眼の該当する等級よりも、いずれか1眼の該当する等級が上位である場合は、その1眼のみに障害が存するものとみなして、等級を認定します。

例)1眼の視力が0.5、他眼の視力が0.02である場合は、両眼の視力障害としては第9級の1に該当しますが、 1眼の視力障害としては、第8級の1に該当することになり、両眼の場合の等級よりも1眼の方が上位であることから、第8級の1とする、ということです。

2、調節機能障害

ア、「眼球に著しい調節機能障害を残すもの」とは、調節力が通常の場合の1/2以下に減ったものをいいます。

(調節力とは、明視できる遠点から近点までの距離的な範囲(これを「調節域」といいます。)をレンズに換算した値のことで、単位はD(ジオプトリー)です。調節力は、年齢によってことなります。)

イ、調節力が1/2以下に減っているか否かは、被災した眼が1眼のみであって、被災していない眼の調節力に異常がない場合は、当該他眼の調節力との比較により行います。

ウ、両眼が被災した場合及び被災した眼は1眼のみであっても被災していない眼の調節力に異常が認められる場合は、年齢別の調節力を示す下表の調節力値との比較により行います。

この場合、表に示される年齢は、例えば「40歳」については「40 歳」から「44歳」までの者に対応するものとして取り扱います。

なお、年齢は治ゆ時における年齢とします。

年齢(歳) 15~ 20~ 25~ 30~ 35~ 40~ 45~ 50~ 55~ 60~ 65~
調節力(D) 9.7 9.0 7.6 6.3 5.3 4.4 3.1 2.2 1.5 1.35 1.3

エ、上記イの場合には被災していない眼の調節力が1.5D以下であるときは、もともと、調節の機能が失われていたと認められるので、認定の対象とはなりません。

また、上記ウの場合には、55歳以上であるときは、認定の対象とはなりません。

3、運動障害

ア、「眼球に著しい運動障害を残すもの」とは、眼球の注視野の広さ が1/2以下に減ったものをいいます。

(眼球の運動は、各眼3対、すなわち6つの外眼筋の作用によって行われています。この6つの筋は、一定の緊張を保っていて、眼球を正常の位置に保たせるものです。もし、眼筋の1個あるいは数個が麻痺した場合は、眼球はその筋の働く反対の方向に偏位して(麻痺性斜視)麻痺した筋の働くべき方向において、眼球の運動が制限されることとなります。注視野とは、頭部を固定し、眼球を運動させて直視することのできる範囲をいいます。注視野の広さは、本来、相当の個人差があるものですが、平均では単眼視で各方面約50度、両眼視で各方面約45度とされています。

イ、複視

a 「複視を残すもの」とは、次のいずれにも該当するものをいいます。

・本人が複視のあることを自覚していること

・眼筋の麻痺等複視を残す明らかな原因が認められること

・ヘススクリーンテストにより患側の像が水平方向又は垂直方向の目盛りで5度以上離れた位置にあることが確認されること

b 上記aに該当するもののうち、

・「正面視で複視を残すもの」とは、ヘススクリーンテスト により正面視で複視が中心の位置にあることが確認されたものをいい、「正面視以外で複視を残すもの」とは、それ以外のものをいいます。

専門用語解説

・複視とは、右眼と左眼の網膜の対応点に外界の像が結像せずにずれているために、ものが二重に見える状態のことをいいます。麻痺した眼筋によって複視が生ずる方向が異なります。

複視を残す場合、併せて頭痛等の神経症状を残すことが多くありますが、これらは複視によって派生的に生じているものであり、症状としても複視とは別途に独立して評価する必要はない程度のものであり、複視の他に、頭痛等が後遺障害として評価されることはありません。

また、複視の原因である眼筋の麻痺等は、「眼球の著しい運 動障害」である注視野の減少の原因でもあるため、「眼球の著しい運動障害」に該当する眼筋の麻痺等がある場合には、通常複視をも残すこととなります。

・ヘススクリーンテストとは、指標を赤緑ガラスで見たときの 片眼の赤像、他眼の緑像から両眼の位置ずれを評価する検査方法です。

例えば、右外転神経麻痺の場合、右眼に赤ガラスを通して固視させると、左眼に緑ガラスを通して見た固視点は右方へ大きくずれますが、左眼に赤ガラスを通じて固視させると右眼に緑ガラスを通して見た固視点は交叉性に小さくずれます。

・複視には、上記の両眼性のもののほか、単眼性複視があります。

単眼性複視とは、水晶体亜脱臼、眼内レンズ偏位等によって生ずるもので、眼球の運動障害により生ずるものではないので、 視力障害として評価すべきものです。

4、視野障害

ア、視野の測定は、ゴールドマン型視野計によることとされています。


イ、「半盲症」、「視野狭さく」及び「視野変状」とは、V/4視標による8方向の視野の角度の合計が、正常視野の角度の60%以下にな った場合をいいます。

なお、暗点は絶対暗点を採用し、比較暗点は採用しないこととされています。

・視野とは、眼前の1点を見つめていて、同時に見える外界の広さをいいます。

なお、 日本人の視野の平均値は、次のとおりです。

方向 視野(V/4)
60(55-65)
上外 75(70-80)
95(90-100)
外下 80(75-85)
70(65-75)
下内 60(50-70)
60(50-70)
内上 60(50-70)

・半盲症とは、視神経繊維が、視神経交叉又はそれより後方において侵されるときに生じるものであって、注視点を境界として、両眼の視野の右半部又は左半部が欠損するものをいいます。

両眼同側の欠損するものは同側半盲、両眼の反対側の欠損するものは異名半盲といいます。

・視野狭さくとは、視野周辺の狭さくであって、これには、同心性狭さくと不規則狭さくとがあります。

高度の同心性狭さくは、たとえ視力は良好であっても、著しく視機能を阻げ、周囲の状況をうかがい知ることができず、 歩行その他諸動作が困難となります。

また、不規則狭さくには、上方に起こるものや内方に起こるもの等があります。

・視野変状には、半盲症、視野の欠損、視野狭さく及び暗点が含まれますが、半盲症及び視野狭さくについては、障害等級表に明示されているので、ここにいう視野変状は、それ以外の暗点と視野欠損を指します。

なお、暗点とは、生理的視野欠損(盲点)以外の病的欠損を生じたものをいい、中心性漿液性脈絡網膜炎、網膜の出血、脈絡網膜炎等にみられます。

比較暗点とは、V/4指標では検出できなくても、より暗い又はより小さな指標では、検出される暗点をいいます。

また、網膜に感受不受部があれば、それに相当して、視野上に欠損を生じますが、生理的に存する視野欠損の主なものはマリオネット盲斑(盲点)であり、病的な視野欠損は、網膜の出血、網膜動脈の開塞等にみられます。

外傷性散瞳についても、以下の取扱いにより、障害として評価されます。

ア、1眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著明な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすものについては、第12級を準用。

イ、1眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすものについては、第14級を準用。

ウ、両眼について、前記アの場合には第11級を、またイの場合には第12級をそれぞれ準用。

エ、外傷性散瞳と視力障害又は調節機能障害が存する場合は、併合の方法を用いて準用等級を定める。 (散瞳(病的)とは、瞳孔の直径が開大して対光反応が消失又は減弱するものをいい、羞明とは、「まぶしい」ことをいいます。)


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